自律神経失調症?いえいえ、それは男性更年期障害です

自律神経のバランスが崩れている

40代、50代に入ってから「気分がどうしても上がらない」「以前は出来ていた仕事に集中して取り組めない」「朝起きるのが辛い」などの感覚を抱えていませんか?原因がよくわからず、辛い思いをされてますよね。もしかするとそれ、自律神経のバランスが崩れた自律神経失調症にかかる男性更年期障害かもしれません。

自律神経失調症?いえいえ、それは男性更年期障害です

自律神経とは

原因不明の身体症状を「不定愁訴」といいます。不定愁訴は、「自律神経」のバランスが崩れた際に症状として現れるものです。自律神経は、脳や脊髄などの中枢神経から全身に広がる「末梢神経」を構成する神経の1つで、血管や内臓など「意志ではコントロールできない」器官を制御しています。

 

ちなみに、末梢神経は「体性神経」という神経からも構成されていますが、骨格筋の反射による運動機能の調節など「意志によるコントロールが可能」であることが違いになります。

 

自律神経はさらに、「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。この交感神経と副交感神経のバランスが崩れることにより、自律神経失調症が発現していくことになります。

 

交感神経

交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれる神経で、激しい活動を行っている時や不安・恐怖などストレスを感じている時に活性化します。血管を収縮させて血圧を上げる効果があり、急な動きにも素早く反応が取れる状態を作り出します。

 

副交感神経

副交感神経は、「身体の修復」が主な役割の神経で睡眠中や休息などリラックスしている時に活性化します。副交感神経が活性化すると、交感神経とは逆に血管が広がり血圧を下げる効果があります。

血管が広がることで栄養や酸素が内臓を循環し、老廃物などを排出する新陳代謝が活発に行われます。

自律神経失調症?いえいえ、それは男性更年期障害です

自律神経失調症とは

交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れた際に起こる症状の総称を「自律神経失調症」といいます。

自律神経失調症は、医学会で正式に認められたものではなく、「神経症やうつ病に付随する各種症状を総称したもの」と国際的に理解されていますが、日本心身医学会では暫定的に「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と定義されています。

自律神経失調症は4つに分けられる

自律神経失調症は、「本態性型自律神経失調症」「神経症型自律神経失調症」「心身症型自律神経失調症」「抑うつ型自律神経失調症」の4つに分けられます。

 

本態性型自律神経失調症

「本態性型自律神経失調症」とは、先天的に自律神経が乱れやすい体質を持った方が対象の自律神経失調症です。自律神経を構成する交感神経と副交感神経の切り替えが上手くできず、不安定であることが原因であるとされています。

 

心身症型自律神経失調症

「心身症型自律神経失調症」は、日常生活で生じるストレスや疲労などが原因となって生じます。ストレスにより身体に異常が見られるものは「心身症」と呼ばれ、検査により身体の異常が確認できるものは「器質性心身症」、確認できないものは「心身症型自律神経失調症」と分類されています。

 

神経症型自律神経失調症

「神経症型自律神経失調症」は、体調不良や周囲の環境の変化に過敏に反応することで生じます。些細な事や細かいことにこだわる人が発症しやすく、外部の刺激を強く受けてしまうことが原因です。パニック障害を発症することもあります。

 

抑うつ型自律神経失調症

「抑うつ型自律神経失調症」は、自分の感情やストレスを開放することなく抑えこむことで生じます。意欲・気力などの精神的な機能低下である「抑うつ状態」が症状として生じます。この抑うつ状態の裏にはうつ病が隠れていることもあり注意しなければなりません。

 

症状が現れるきっかけは、子供の自立や身内の不幸など人生に転機が訪れた際に発症することが多いようです。

自律神経失調症ではなく男性更年期障害

原因不明の不定愁訴の症状がある場合には自律神経失調症が疑われますが、男性更年期障害の可能性もあります。男性更年期障害は自律神経失調症のひとつで、性ホルモンの減少が要因となって生じます。

 

男性更年期障害は、ここ10年の間に認知度が上昇してきた症候群です。女性更年期障害と同様に主に40代、50代から症状が出始めることがほとんどですが、20代でも発症することがあります。

原因は、身体のメカニズムの違いによるものです。

女性更年期障害のメカニズム

女性更年期障害は、閉経による女性ホルモンの急激な減少が原因となって生じます。女性ホルモンには、卵巣で作られるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)がありますが、分泌プロセスはやや複雑です。

 

女性ホルモンの分泌プロセス

女性ホルモンの分泌は、脳の視床下部が起点となっています。視床下部は、女性ホルモンの分泌を促す性腺刺激ホルモン放出ホルモンであるGnRHを下垂体に放出します。GnRHを受け取った下垂体は、卵巣に向けて性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンを放出します。ゴナドトロピンは、黄体化ホルモンである(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)から構成されます。

 

ゴナドトロピンに卵巣が反応すると、卵巣の卵胞が成熟を始め、エストロゲンが分泌されます。エストロゲンの十分な分泌により下垂体から黄体化ホルモンが分泌され、卵子が排出されます。これが月経です。

一連の月経のプロセスの中で、エストロゲンとプロゲステロンは視床下部と下垂体にホルモン調節を促す「フィードバック機構」という働きも担っています。

 

女性更年期障害の原因

しかし、40代に入るとエストロゲンを分泌する卵胞が急激に減少します。そしてこの卵胞がほとんどなくなり、月経が起こらなくなることが閉経なのです。

閉経はGnRHを放出する視床下部に大きな影響を与えます。GnRHを下垂体に放出しているにもかかわらず、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが分泌されないからです。

実は視床下部は自律神経を管理しており、ホルモンバランスの急激な崩壊の煽りを受けた視床下部は自律神経のバランスを乱してしまいます。これが女性更年期障害の原因です。

 

男性更年期障害のメカニズム

対して男性更年期障害は、男性ホルモンであるアンドロゲンを構成するテストステロンの減少が主な要因です。テストステロンは男性の身体を作るホルモンで、約95%が精巣(睾丸)で、残りの5%が多種のホルモンを分泌する副腎から生成されています。

 

テストステロンは、男性らしく活き活きと活動するために必要なホルモンであり、分泌の減少により精神的・肉体的に悪い影響があります。

テストステロンの減少は、加齢が原因の「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と「ストレス」が複雑に絡み合って生じるものです。女性の閉経のように身体に急激な変化がなく発症時期も個人差があるために、自律神経失調症の症状を有していても原因が把握できないことがあります。

 

LOH症候群

男性更年期障害の主な要因は、LOH症候群によるものです。テストステロンは思春期を迎えるころに急激に増加し20代をピークとして加齢とともに徐々に減少します。

減少量は人によって様々で、60~70代でもテストステロン値を若く保ち続ける方もいれば、20代で70代並のテストステロン値まで落ち込む方もいます。

 

ストレス

テストステロンの減少は、継続的なストレスの負担でももたらされます。ストレスが増加すると、神経系・内分泌系の中枢である視床下部はストレスに対処するためCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌量を増加させます。

CRHの分泌量が増加すると副腎皮質からストレスに対処する糖質コルチコイドや電解質コルチコイドが放出されます。

この際、視床下部は男性ホルモンの分泌を誘発するGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌も担っていますが、CRHが増加するとGnRHの分泌は抑制され、男性ホルモンの分泌量が落ちてしまいます。

つまり、ストレス量の増加によりテストステロンの分泌は抑制されてしまうのです。

 

男性更年期障害と自律神経失調症の見分け方

男性更年期障害と自律神経失調症は、症状がほぼ同じ不定愁訴であるため見分けにくいことが正直なところです。抑うつ状態を抱えて精神科を受診したところ自律神経失調症との診断を受けたにもかかわらず、泌尿器科での血液検査で男性更年期障害との診断が下されることもあります。

 

男性更年期障害の診断が下されると、男性ホルモン分泌を補うためのホルモン治療や漢方薬による治療が行われます。つまり、男性ホルモン検査での結果を見ながら医師と共に複合的に治療していく訳です。

 

そのため、受診する医科を変え、セカンドオピニオンを求めながら治療方針を立てることを推奨します。